近年、メガネ型ウェアラブルデバイスの種類が増えてきて、そろそろユーザーも好みのデバイスを選べるようになってきました。

特に日常使いが出来るスマートグラスが多くなってきて、日本でも福井・鯖江のフレームを使用した国産のスマートグラスが先日発表となりました。

スマートグラスとは、日常的にかける眼鏡の形をしながら、情報表示や通信機能を内蔵したスマート機器です。レンズやフレームに小型ディスプレイやカメラ、センサーなどが組み込まれており、視界の中にナビゲーション、通知、翻訳結果などを重ねて表示できます。スマートフォンと連携して使うことが多く、ハンズフリーで情報を取得できる点が大きな特徴です。仕事や移動、日常生活をより便利にサポートする次世代デバイスとして注目されています。
日本で発表されたスマートグラスは翻訳・議事録・原稿表示・AI機能に特化したデバイスで、通常のメガネと変わりがなく違和感なく使用できます。
現在クラウドファンディングでプロジェクト活動いていますので、ご興味のある方は是非。
次世代スマート眼鏡『SABERA』
で、我々眼鏡店にもスマートグラスやARグラスに使用する度付きレンズの加工依頼が舞い込んできます。
今回はスマートグラス用の極小レンズを加工しましたお話しを・・・
事前に加工依頼のご連絡がありまして、実際の製品を確認させていただくと、かなりレンズが小さい・・・!

聞くと他店では加工出来ず断られたとのこと・・・。
確かに専用の極小サイズが削れる機械が無いと難しそうではあります。

ダミーレンズにはアイポイントの設定位置が指定されています。10円玉と比べてもレンズの小ささがおわかりいただけると思います^^
今回はナイロール+リムイン加工で、レンズに溝を掘ってその中に溝幅と同幅のフレームリムをはめ込む加工となります。この加工、ナイロールかフルリムインかどちらかでしたらまあ問題はないのですが、今回はそのミックスで、ステンレス製のハーフリムフレームにレンズをナイロン糸でとめるのですが、この小ささではレンズ幅がギリギリです。糸のテンションが高すぎるとリム部分のレンズが割れる恐れがあり、低すぎるとレンズのガタツキが起こります。溝位置は0.1mmでも前後にズレると割れの原因となりかねません。いやあ怖い。

なんとか対策を考えながらダミーレンズを型取り、加工機械にデータを読み込ませて加工準備に入ります。

加工開始。機械よ、あとは溝掘り加工だ!ズレずにお願いします!
無事に加工終了。両レンズを削り終え、慎重にフレームにレンズをはめ込みます。うーん怖い。

そしてレンズイン。
いいね!

溝もズレることなく微妙なレンズカーブにも対応できました。

装着。無事綺麗に完成となりました^^
今後こういった加工依頼が増えてくると思われますのでしっかり対応できるように頑張りたいと思います。
それでですね、スマートグラス用レンズを製作する時にある疑問がふと頭に過ぎりました。
「物理的な画面や投影部分は目の前にあるのに、なぜ遠用度数を入れるんだろう?」と。
よく、スマホの画面で写真や動画を撮る時に画面越しに遠方の対象物を見ますが、平面に写る映像を見ているだけなので、当然調節力が弱くなっている方(いわく老眼)は画面がボケてしまいますよね。
ARグラスも投影しているモノを極小ディスプレイ越しに見るので老眼が必要なんじゃない?それで、PD(瞳孔距離)も輻輳を考慮して狭くしないといけないのでは?と思ったのですが・・・
いやはや、無知故の勘違いでした^^;;
遠用度になる理由は映像の「ピントが合う距離」が遠いためなんですね。
ARグラスやスマートグラスは、ディスプレイ自体は目の前(数センチの距離)にありますが、内蔵された特殊なレンズやミラーの光学的な働きにより、「数メートル先(一般的に2〜6メートル程度)に浮かぶ巨大なスクリーン」として映像を結像させます。
これを「虚像距離」と呼ぶそうです。
人間の目は、見ている対象物の距離によって黒目の位置が変わります。
近用(近く)を見る時、 読書やスマホなど、30〜40cmの距離を見る際は、両目が内側に寄る(輻輳・ふくそう)ため、瞳孔間の距離が数ミリ狭くなります。
遠用(遠く)を見る時、 数メートル以上先を見る際、人間の視線はほぼ真っ直ぐ平行になります。
ARグラスの映像を見ている時、目のピント調節機能は「数メートル先の遠くを見ている状態」として働いています。そのため、寄り目を想定した狭い「近用PD」で作ってしまうと、光の軸と目の軸がズレてしまい、眼精疲労や映像のブレ、酔いの原因となってしまいます。
ARグラスのレンズを作る際のポイントとして、度数も「遠用」で合わせる。
PDだけでなく、レンズの近視や乱視の度数も、基本的には遠くを見るためのメガネと同じ設定にします。
老眼(老視)でも「近用度数」は不要。
ピントを合わせる距離が遠くに設定されているため、普段手元が見えにくい方でも、ARグラス用のレンズに老眼鏡の度数(近用度数)を入れる必要はありません。遠用視力がしっかり矯正されていればハッキリ見えます。
で、またまた疑問が湧き上がってきました。
「ARグラスで本の活字を読む時、果たして老眼の影響は受けないのか?」
これは興味深い答えにたどり着きました。
「ARグラスを通して見る」という状況下で、見ている対象が「現実の物理的な本」なのか、それとも「ARで空間に投影されたバーチャルな本」なのかによって、結果が全くの真逆になるとのこと。
それぞれどうなるか、解説します。
1. 「現実の物理的な本」をARグラス越しに見る場合
結論:現実世界と同じように老眼の影響を受けて見えにくいです。むしろ余計に見にくい(調節力が十分にある人、または若年齢の方は除く)。
理由はARグラスに「遠用」の視力補正レンズを入れている場合、それは「遠くを見るためのメガネ」をかけている状態です。老眼(調節力の低下)がある方が、遠く用のメガネをかけたまま手元の本を見ようとすると、ピントが合わずにボヤけてしまいますよね。それと全く同じことが起きます。
現実の物体から反射する光は、物理的な距離(30cmなど)から目に届くため、遠用レンズ越しではピントを合わせることができません。そのため、ARグラスをかけながら手元のスマホや本を読むのは、かなり困難になります。
2. 「ARで投影されたバーチャルな本」を近くに配置して見る場合
結論:なんと、老眼の影響を受けずハッキリ読めます!
ここがARの魔法のようなところです。AR空間上で、ウィンドウや電子書籍を「目の前30cm」の位置に引き寄せて配置したとします。
しかし前回の解説の通り、ARグラスから目に入ってくる映像の光は、常に「数メートル先(遠用)」から飛んでくるように光学的に変換されています。
つまり、映像がどんなに近くにあるように見えても、目のレンズ(水晶体)は「数メートル先の遠くを見ている状態」のままなのです。(ほんまか!?)
これは実際のARグラスで試してみないとなんとも言えません・・・。

ARグラスで投影されたものを見る時、実像としての距離の壁は存在しないことになります。
手前にあるのに遠い距離。なんとも不思議な感じです。
《タカダ》
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