王座戦第3局
2025年10月05日
将棋・第73期王座戦五番勝負第3局が名古屋市内のホテルで開催されました。

棋界では序列2位となる伊藤匠叡王が藤井王座(竜王・名人=七冠)に挑戦している本棋戦は、対戦成績が1勝1敗と五分の星取りとなっております。
名古屋出身の藤井王座にとっては地元開催となり、熱心な地元ファンの勝利を願う声援が後押しとなるのか、それとも着実に力をつけてきて現在、藤井八冠(当時)から叡王位を奪取した唯一の棋士となっております。棋界では序列2位。レーティングは3位と超実力派の若手棋士です。そして現在の対戦成績でもわかるように藤井王座とは拮抗した勝負となっており、本局がタイトルに王手をかける大事な一戦となります。
先手伊藤叡王で始まった本局は相掛かりで進行しました。
序盤から飛先の歩を突き合うスピード感のある立ち上がりでした。ここで先手が銀をタダで捨てる踏み込みを見せ、飛成含みで主導権を握りにいくのが本局最初のハイライト。用意の構想と見られ、互角圏ながら局面のテンポは明確に先手番の流れになります。
中盤は1筋〜2筋の攻防と8筋の突破争いが併走。夕食休憩前後、藤井王座が“飛+香”の二段ロケットで8筋を切り裂きにいくも、伊藤叡王が軽妙に受け流して形勢を押し戻す展開に。とくに藤井玉が6三へかわした局面で放たれた▲8六金が厳しく、控室評価は先手優勢へと傾きました(飛を手にした先手は▲5三歩成〜王手角取りの含み)。この一着が流れを大きく引き寄せた場面です。
終盤、勝負を決定づけたのは“歩頭金”の妙手。伊藤叡王が▲7五金と出て詰めろをかけ、同歩なら▲同桂から後手玉に即詰みが生じる形に――藤井王座は長考を重ねますが、先手玉は寄らず、攻防の天秤がここで完全に切れました。まさに勝負手筋が爆発した場面で、見ていても“これは決まった”と感じる迫力。
その前段での“銀捨て”からのペース掌握、さらに終盤戦での金打ち二連発(▲8六金→▲7五金)という流れが一本のストーリーのように繋がり、藤井王座の粘りを許さず押し切ったのが本局の印象です。ネット観戦記では「77手目の工夫」が転換点だったとの指摘もあり、研究と実戦感覚の噛み合いが勝因として浮かびます。

結果は20時06分、103手で伊藤叡王の勝ち。消費時間は▲伊藤4時間48分、△藤井4時間57分。これでシリーズは伊藤叡王の2勝1敗、藤井王座はカド番に。内容面でも“受けの好手で突き放した快勝譜”という評価に頷ける一局でした。第4局(10月7日・秦野「元湯 陣屋」)へ向け、先手番の藤井王座がどんな修正を持って巻き返しを図るのか――相掛かりの最先端がなお楽しみ、そんな余韻を残した名局です。
《タカダ》

棋界では序列2位となる伊藤匠叡王が藤井王座(竜王・名人=七冠)に挑戦している本棋戦は、対戦成績が1勝1敗と五分の星取りとなっております。
名古屋出身の藤井王座にとっては地元開催となり、熱心な地元ファンの勝利を願う声援が後押しとなるのか、それとも着実に力をつけてきて現在、藤井八冠(当時)から叡王位を奪取した唯一の棋士となっております。棋界では序列2位。レーティングは3位と超実力派の若手棋士です。そして現在の対戦成績でもわかるように藤井王座とは拮抗した勝負となっており、本局がタイトルに王手をかける大事な一戦となります。
先手伊藤叡王で始まった本局は相掛かりで進行しました。
序盤から飛先の歩を突き合うスピード感のある立ち上がりでした。ここで先手が銀をタダで捨てる踏み込みを見せ、飛成含みで主導権を握りにいくのが本局最初のハイライト。用意の構想と見られ、互角圏ながら局面のテンポは明確に先手番の流れになります。
中盤は1筋〜2筋の攻防と8筋の突破争いが併走。夕食休憩前後、藤井王座が“飛+香”の二段ロケットで8筋を切り裂きにいくも、伊藤叡王が軽妙に受け流して形勢を押し戻す展開に。とくに藤井玉が6三へかわした局面で放たれた▲8六金が厳しく、控室評価は先手優勢へと傾きました(飛を手にした先手は▲5三歩成〜王手角取りの含み)。この一着が流れを大きく引き寄せた場面です。
終盤、勝負を決定づけたのは“歩頭金”の妙手。伊藤叡王が▲7五金と出て詰めろをかけ、同歩なら▲同桂から後手玉に即詰みが生じる形に――藤井王座は長考を重ねますが、先手玉は寄らず、攻防の天秤がここで完全に切れました。まさに勝負手筋が爆発した場面で、見ていても“これは決まった”と感じる迫力。
その前段での“銀捨て”からのペース掌握、さらに終盤戦での金打ち二連発(▲8六金→▲7五金)という流れが一本のストーリーのように繋がり、藤井王座の粘りを許さず押し切ったのが本局の印象です。ネット観戦記では「77手目の工夫」が転換点だったとの指摘もあり、研究と実戦感覚の噛み合いが勝因として浮かびます。

結果は20時06分、103手で伊藤叡王の勝ち。消費時間は▲伊藤4時間48分、△藤井4時間57分。これでシリーズは伊藤叡王の2勝1敗、藤井王座はカド番に。内容面でも“受けの好手で突き放した快勝譜”という評価に頷ける一局でした。第4局(10月7日・秦野「元湯 陣屋」)へ向け、先手番の藤井王座がどんな修正を持って巻き返しを図るのか――相掛かりの最先端がなお楽しみ、そんな余韻を残した名局です。
《タカダ》
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