棋王戦五番勝負第1局~新たなる定跡~
2024年02月10日
菅井八段を挑戦者に迎えて現在進行しているタイトル戦の王将戦七番勝負は藤井王将の4-0ストレート勝ちで幕を閉じました。全局において終始菅井八段を圧倒した藤井王将。
そして新たなタイトル戦が始まります。棋王戦五番勝負の第1局が2月4日に富山県魚津市で開催されました。
迎えるのは同年の21歳、伊藤匠七段。
プロ入りより藤井八冠の最大のライバルとしてグングンと頭角を現してきている気鋭の棋士です。
昨年、竜王戦を予選5組からの勝ち上がりで竜王挑戦者まで昇り詰め、藤井竜王に挑戦するも結果は0-4のストレートの完封負けを強いられ、悔しい思いを胸に舞台は違いますが再度挑戦権を得た形となります。
伊藤七段は寡黙な青年であまり表立って内面を出さない性格のようですが、やはり同年代で遙か先を征く藤井八冠に、奥底には強いライバル心があることは明白です。
棋王戦はタイトル戦の中でも最短の持ち時間で戦う棋戦で、双方持ち時間4時間の当日決着となります。
棋王といえば羽生九段、そして渡辺九段が共に10連覇(羽生九段は12連覇)を成し遂げている棋戦です。
藤井八冠がその連覇に追いつき追い越せることが出来るのか、それとも挑戦者の伊藤八段が新棋王として名を連ねられるのか・・・。
振り駒によって藤井八冠が先手番となりました。
藤井八冠が角換わりを志向すると、伊藤七段もそれに応じます。
そして驚くことに午前中までに85手も進んでいきます。下手したら終局も見えそうな手数です。
しかし、AI世代の筆頭とも言える二人の研究は凄まじく、当然ここまでも研究範囲の内なのでしょう。
しかし、藤井八冠の王様が60手辺りから9筋を突破していくべく上ずっていき一見危うそうに見えますが、後手側から直接的な攻め手が難しく、内容的には藤井八冠が一歩リードしているようにも見えます。
昼休憩明け、藤井八冠が本格的に入玉の準備をしていきます。
100手を超えて後手も入玉模様となり129手目に伊藤七段が藤井八冠に「持将棋ですかね?」と尋ねると、藤井八冠も「はい」と答えこの時点で持将棋が成立しました。
持将棋とは、双方(少なくとも片方)の玉が敵陣3段目以内に入り、どちらも相手玉を詰ます見込みがなくなった場合をいう。両対局者の合意によって成立し、玉を除く大駒(飛車と角)1枚を5点、小駒(金、銀、桂、香、歩)1枚を1点として数え、両対局者の点数がそれぞれ24点以上ある場合に成立する。公式戦では指し直しとなるが、タイトル戦では「引き分け」として扱われる。
この対局には大きな意味がありました。
1つは角換わりにおいては先手が優位であり、AIによってその必勝の証明がされていますが、敢えて後手側が持将棋に誘導して引き分けに持ち込んだこと(後手で負けなかったことで実質勝ちに等しい)。そしてそれを裏付ける形で、やはり先手角換わり腰掛け銀定跡では後手に勝ち筋が見いだせないこと。今後はこの新たな『後手角換わり持将棋定跡』に対して、今まで気にされていなかった先手が持将棋を回避する手段の徹底的な研究が始まること。
しかし、持将棋といえばお互いが玉を寄せきれず泥沼のように200手~300手400手は指されるであろうとても長く苦行のような指し手になるのが普通なのですが、驚くことに本局はお互いほぼミスなく短手数で持将棋となっていることで、これは伊藤七段だけが知る作戦ではなく、藤井八冠もまた後手を持ったときに生じるであろう研究の範囲の出来事であったと考えます。
まあでも現在において公式戦で持将棋を狙って出来る棋士は伊藤七段
か、もしくは藤井八冠ぐらいでしょう。本局のような綺麗な持将棋になんかなりませんからね、普通は(笑)
ヤバいわこの2人・・・怖い。指している将棋の次元が違う。
第2局はどうなるんだろう・・・藤井八冠が『持将棋定跡』を使うとは考えられないし・・・久々に相掛かりが見られるかも?
《タカダ》
そして新たなタイトル戦が始まります。棋王戦五番勝負の第1局が2月4日に富山県魚津市で開催されました。
迎えるのは同年の21歳、伊藤匠七段。
プロ入りより藤井八冠の最大のライバルとしてグングンと頭角を現してきている気鋭の棋士です。
昨年、竜王戦を予選5組からの勝ち上がりで竜王挑戦者まで昇り詰め、藤井竜王に挑戦するも結果は0-4のストレートの完封負けを強いられ、悔しい思いを胸に舞台は違いますが再度挑戦権を得た形となります。
伊藤七段は寡黙な青年であまり表立って内面を出さない性格のようですが、やはり同年代で遙か先を征く藤井八冠に、奥底には強いライバル心があることは明白です。
棋王戦はタイトル戦の中でも最短の持ち時間で戦う棋戦で、双方持ち時間4時間の当日決着となります。
棋王といえば羽生九段、そして渡辺九段が共に10連覇(羽生九段は12連覇)を成し遂げている棋戦です。
藤井八冠がその連覇に追いつき追い越せることが出来るのか、それとも挑戦者の伊藤八段が新棋王として名を連ねられるのか・・・。
振り駒によって藤井八冠が先手番となりました。
藤井八冠が角換わりを志向すると、伊藤七段もそれに応じます。
そして驚くことに午前中までに85手も進んでいきます。下手したら終局も見えそうな手数です。
しかし、AI世代の筆頭とも言える二人の研究は凄まじく、当然ここまでも研究範囲の内なのでしょう。
しかし、藤井八冠の王様が60手辺りから9筋を突破していくべく上ずっていき一見危うそうに見えますが、後手側から直接的な攻め手が難しく、内容的には藤井八冠が一歩リードしているようにも見えます。
昼休憩明け、藤井八冠が本格的に入玉の準備をしていきます。
100手を超えて後手も入玉模様となり129手目に伊藤七段が藤井八冠に「持将棋ですかね?」と尋ねると、藤井八冠も「はい」と答えこの時点で持将棋が成立しました。
持将棋とは、双方(少なくとも片方)の玉が敵陣3段目以内に入り、どちらも相手玉を詰ます見込みがなくなった場合をいう。両対局者の合意によって成立し、玉を除く大駒(飛車と角)1枚を5点、小駒(金、銀、桂、香、歩)1枚を1点として数え、両対局者の点数がそれぞれ24点以上ある場合に成立する。公式戦では指し直しとなるが、タイトル戦では「引き分け」として扱われる。
この対局には大きな意味がありました。
1つは角換わりにおいては先手が優位であり、AIによってその必勝の証明がされていますが、敢えて後手側が持将棋に誘導して引き分けに持ち込んだこと(後手で負けなかったことで実質勝ちに等しい)。そしてそれを裏付ける形で、やはり先手角換わり腰掛け銀定跡では後手に勝ち筋が見いだせないこと。今後はこの新たな『後手角換わり持将棋定跡』に対して、今まで気にされていなかった先手が持将棋を回避する手段の徹底的な研究が始まること。
しかし、持将棋といえばお互いが玉を寄せきれず泥沼のように200手~300手400手は指されるであろうとても長く苦行のような指し手になるのが普通なのですが、驚くことに本局はお互いほぼミスなく短手数で持将棋となっていることで、これは伊藤七段だけが知る作戦ではなく、藤井八冠もまた後手を持ったときに生じるであろう研究の範囲の出来事であったと考えます。
まあでも現在において公式戦で持将棋を狙って出来る棋士は伊藤七段
か、もしくは藤井八冠ぐらいでしょう。本局のような綺麗な持将棋になんかなりませんからね、普通は(笑)
ヤバいわこの2人・・・怖い。指している将棋の次元が違う。
第2局はどうなるんだろう・・・藤井八冠が『持将棋定跡』を使うとは考えられないし・・・久々に相掛かりが見られるかも?
《タカダ》
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