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ドライブマイカー。

2022年04月16日

千里中央店

こんにちは。


先日発表された「第94回米アカデミー賞」で、日本映画としては『おくりびと』以来13年ぶりに国際長編映画賞を獲得した『ドライブ・マイ・カー』(監督/濱口竜介)。



2021年8月に公開され、国内はもちろん海外での評価が高く、「第74回カンヌ国際映画祭」では日本映画として初となる脚本賞など4部門を制していました。

アカデミー賞受賞のニュースをテレビやネットで見聞きすることも多く「観てみたいなー」と気にはなっていたところに、先に映画を観た当店スタッフのススメもあって、様々な期待を胸に休みの日に映画館に足を運びました。


『ドライブマイカー』公式サイトにも掲載されているストーリーはコチラ…

舞台俳優であり演出家の家福(かふく)【西島秀俊】は、愛する妻【霧島れいか】の音おとと満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさき【三浦透子】と出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻【岡田将生】の姿をオーディションで見つけるが…。

喪失感と“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福。みさきと過ごし、お互いの過去を明かすなかで、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく。

人を愛する痛みと尊さ、信じることの難しさと強さ、生きることの苦しさと美しさ。最愛の妻を失った男が葛藤の果てに辿りつく先とは――。登場人物が再生へと向かう姿が観る者の魂を震わせる圧巻のラスト20分。誰しもの人生に寄り添う、新たなる傑作が誕生した。



















現在もロングラン公開中ですし、これから観る方も多いと思うので詳しい内容はお話しできませんが…

これから『ドライブマイカー』を観ようという方におすすめしたいことがあります。
それは映画を観る前に、チェーホフの劇作品『ワーニャ叔父さん』のあらすじと登場人物をざっくりとでもいいので理解しておくこと。

何故かというと、映画『ドライブマイカー』は全体を通して、家福の愛車サーブ900での運転時の車内でのシーンが多く、同時にとても重要なのですが、走行中ずっと再生されるカセットテープ。それが亡き妻の声で吹き込まれた劇作品『ワーニャ叔父さん』の台本だからです。

家福がそのテープを車内で聞き自分が演じるワーニャ役の台詞を声に出して暗唱することでイメージを膨らませる。それが舞台俳優であり演出家でもある家福の欠かすことの出来ないルーティン。
それは妻音の死後も変わらず続けていること。
みさきが専属ドライバーとなってからも。



それでは劇作品『ワーニャ叔父さん』のざっくりとしなあらすじです。



タイトルにもなっているワーニャ(叔父さん)と姪のソーニャ、母親ヴォイニーツカヤの暮らす田舎が舞台。都会に住むワーニャの義理の弟セレブリャコーフとその後妻エレーナが訪れ、滞在しているときのお話です。

『田舎暮らし』については辛く苦しく、みじめなものだと、ワーニャ一家だけでなくその知人の医師アーストロフも含め、みんな自分が不幸だと認識している様子です。

ワーニャは、40代後半で、独身。母親と姪と、朝から晩まで働きづめの生活をしてきました。というのもワーニャは学者である義理の弟セレブリャコーフに心酔していて、彼に都会で華々しく活躍してもらうために、長年、必死で金をつくって仕送りし続けていたのです。

ところが最近になって、義理の弟セレブリャコーフは失脚し、なしくずしに化けの皮がはがれます。そうなって初めて、ワーニャは彼が学者としても人間としても、何の価値もないやつだったと気がつくのです。

素晴らしい人だと信じていたからこそ、自分のことを差し置いてでも、さんざん貢いできたのに……

田舎暮らしをしているけど僕もそこそこのインテリなんだ。もしかしたら偉い学者にもなれたかもしれない。
それを譲って教授につくしたのに、このありさま。
ーーー俺の人生を返してくれーーー

話の中でワーニャがとうとうキレて、義理の弟に発砲するも弾は外れてケガは無く、警察沙汰にもならず、結果として弟夫婦が都会へ戻るのが早まっただけです。仕送りさえこれまで通りに続けていくことになっています。

ワーニャは自殺を考えますが、姪であるソーニャに説得され、彼女といっしょに死ぬまでいまの苦しい生活を続けていくであろうと思わせる流れで幕となります。




『ワーニャ叔父さん』の相関図貼っときます(笑)。






最後に。

この映画を観て僕が印象に残った言葉があります。それは稽古終わりで家福【西島秀俊】と高槻【岡田将生】がバーで飲んだ後、みさき【三浦透子】の運転でホテルへと向かう車内、高槻が家福に言った言葉です。



「どれだけ理解し合っているはずの相手であれ、どれだけ愛し合っている相手であれ、他人の心をそっくり覗き込むなんて、それはできない相談です。そんなことを求めても自分がせつなくなるだけです。しかしそれが自分自身の心であれば、努力さえすれば、努力しただけしっかり覗き込むことができるはずです。ですから結局のところ僕らがやらなくちゃならないのは、自分の心と上手に正直に折り合いをつけていくことじゃないでしょうか。本当に他人を見たいと望むなら、自分自身をまっすぐ見つめるしかないんです。僕はそう思います。」


…そうなんですよね。

本当は相手のことをもっと深く知りたい。距離を縮めたい。そう思ってはいるけど…動けない。
それはやっぱり自分が傷つくのが怖いから。
だから自分の気持ちに蓋をしてる。誤魔化してる。見て見ぬふりをしてやり過ごしてしまう。

でも自分以外の誰かと関係を今より一歩前に踏み出すためには必要なことなんでしょうね…
自分が本当はどう思っていて、どうしたいのか。
そこと向き合わない限り平行線なんだろうなって。
僕は臆病だから怖くてずっと同じ場所に立ち止まってるけど…(笑)

でもこの映画を観て背中を押された気がするんです。相手のせいにせず、自分の気持ちに正直に向き合わなきゃな…って。じゃないと何も変わらないもんな…って。




3時間と少し長めの上映時間ですが、それぞれの心の動きなど丁寧に描かれていてラストまであっという間でした。繰り返し何度も観たいと思える映画です。

また、観終えた後エンディングも含めて色々と考察するのもこの映画の楽しみ方なのかなと思います。

長くなりましたが最後までお読みいただきありがとうございます。ぜひみなさん『ドライブマイカー』ご覧くださいませ…^_^




《ウエノ》

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