春は桜と名人戦の季節・・・。
棋界の年度始めは名人戦から始まります。
4月から7月にかけてロングランで行われる名人戦。
日本将棋界における最も伝統的で格式高い称号であり、全棋士が目指すべき頂でもあります。

現在の名人は藤井聡太名人。今期3連覇を目指します。
挑戦者は棋界No2の実力者でありながら以外にも名人戦初挑戦となる永瀬拓矢九段。
近年、藤井聡太名人に他のタイトル戦でも挑戦する機会が多くなっていますが、今一歩タイトルに手が届いていないもどかしい状況であり、この名人戦にかける思いは人一倍強いと先のインタビューでも感じました。
先後を決める振り駒の結果、挑戦者の永瀬九段が先手となりました。
前回永瀬九段相手に初の初手3四歩を指した藤井名人でしたが、本局はどうなるのか。
お互い飛車先の歩を進めて角道を開ける、オーソドックスな角換わり戦型となりました。こうなるとどちらの研究が相手を上回るのか。お互いの消費時間でどこまでが研究範囲なのかが伺い知れます。
いつもは永瀬九段が時間を消費せずどんどん手を進めていく事が多いのですが、本局は藤井名人があまり時間を使わず指し進めていきます。やはり前回藤井名人に初手3四歩を見せられているので、初手3四歩に絞った研究が出来なくなったのも影響している感じでしょうか。
しかしお互いどんどん手は進み、午後3時頃にはもう終盤かと思うほどに盤面がスッキリしており、角換わりの研究の奥深さが見て取れます。そして、藤井名人がここまで1時間しか使っていないが永瀬九段は3時間と消費時間的にも明らかに藤井名人の研究の範囲内でしょう。
1日目は永瀬九段が封じることとなりました。
明けて2日目。藤井名人が香先に歩を当てた手で長考をしていた永瀬九段だが、封じ手までの考慮時間も含めて2時間の時間をかけて香車で歩を取る。
ここからお互い一手一手をじっくりと考えていく。
しかし永瀬九段が少し苦しいか、藤井名人が永瀬玉に対して直接手で王手をかけていく。
116手目、藤井名人の手番で永瀬玉の詰みが現れる。その手数なんと33手。
解説も、控室の誰もその詰み筋は視えていない。しかし、藤井名人は迷うことなくその詰み筋に駒を放っていく。
「化け物か・・」
先日、詰将棋解答選手権が開催され、久しく登場していなかった藤井名人が参加した。
そこでも圧倒的な解答力で100点満点を叩き出し、尚且全解答者の中で最短で解くという異次元の強さを発揮した矢先の詰み手順。
実践で一人詰将棋解答選手権の延長線を行う藤井名人に、抗える術はない。
何とか正確に詰めろを逃れていく永瀬九段ですが、藤井名人相手には無情にもそれは終局に近づく最短の手に他ならない。
粘る永瀬九段でしたが、134手で投了。
藤井名人が初戦を白星で飾りました。

お互い拮抗した展開でしたが、藤井名人がどの時点で詰みを読んでいたのかわかりませんが、桂、金とタダのところに放った手から、既にAIでも発見できない詰み筋が名人の脳内に描かれていたのでしょうか。ただただため息しか出てない一局でした。
《タカダ》
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