第67期王位戦七番勝負第5局~電光石火~
2026年08月30日
伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦七番勝負は、ここまで2勝2敗のタイで並び、シリーズの後半戦へと突入しました。

王位6連覇を目指す藤井聡太王位に、三冠獲得を狙う伊藤匠二冠が挑む大一番。激闘の舞台となったのは、徳島県徳島市の名料亭「渭水苑」です。
シリーズの主導権を握る防衛か挑戦者の王手か、注目の第5局の模様をお伝えします。
第5局の先手番は藤井王位。初手▲2六歩から進行し、戦型は本シリーズ3度目となる「角換わり」へ進みました。後手の伊藤二冠は、第1局・第3局に続いて果敢に「右玉」を選択します。
序盤は過去の実戦例を交えた高度な探り合いが続きました。39手目に藤井王位が▲2九飛と引いて手を変えると、伊藤二冠は△6二金~△4四歩と陣形を組み替えます。さらに48手目に△3三桂と跳ね、藤井王位が2筋の歩を交換したのに対し、54手目に伊藤二冠が選んだのは△4三金右という力強い一手でした。控室でも「本当に金を上がったのか」と感嘆の声が上がるほどの工夫の手に対し、藤井王位は55手目に▲7九飛と飛車を左辺へ転回。盤上は一気に前例のない深い構想戦へと足を踏み入れました。
藤井王位の▲7九飛に対し、伊藤二冠は56手目△5三銀と中央を手厚く組み直します。これに対し藤井王位は▲6八金左から▲7七金(59手目)と金を活用し、両者ともに1時間を超える長考を繰り出す重厚な押し引きが展開されました。
伊藤二冠が60手目に△2進歩と揺さぶりをかけると、藤井王位は▲2九飛と一旦戻し、△2一飛の受けに対して63手目▲8六歩と敵陣の隙を突く頭突きを繰り出します。伊藤二冠は46分の考慮の末、66手目△6五歩と突き越して反撃の意図を示したところで18時11分となり、藤井王位が67手目を封じて1日目が終了しました。
本局の勝負を分けた最大のポイントは、後手陣の対応と先手の「玉頭への強襲」にありました。
局後の検討でも明かされた通り、63手目▲8六歩に対して後手が64手目△8六同歩と応じた局面が最初の分岐点となりました。伊藤二冠はここで△2五歩と動いて攻め合うべきだったと振り返っており、実戦の△8六同歩から▲8四歩打(65手目)と垂らされたことで、後手は一気に攻めづらい展開へと追い込まれてしまいます。藤井王位の狙い通りの▲8三角(69手目)の打ち込みを許し、先手が盤上の主導権を完全に握る形となりました。
2日目、藤井王位は角を成り込んで馬を作ると、79手目に▲6五歩打と長考の末に踏み込みます。ここでも勝敗を決定づける判断が生じました。伊藤二冠は80手目に△6五同銀と応じましたが、これに対して藤井王位の▲7五馬(81手目)が絶品の手となり、後手陣の金銀の連携が乱れることになりました。代えて△6五同桂と取る変化もありましたが、いずれも先手の果敢な馬の活用が上回る展開となっていました。
藤井王位は83手目▲6四歩打から、85手目▲7六金と守りの金を攻めに動員する凄まじいパワープレーを敢行。後手玉の逃げ道を確実に狭めながら着実に寄り形を作っていきます。
伊藤二冠も86手目△6一玉と玉を早逃げして粘り強く耐えますが、藤井王位の攻めは揺るぎません。▲6五金~▲6五同馬と惜しみなく大駒を清算し、91手目に▲6三銀打と王手必至の形を築きました。
伊藤二冠は92手目△5二金打と受けるよりありませんでしたが、藤井王位が93手目に満を持して▲7九飛と転回したところで、万策尽きた伊藤二冠が投了を告げました。
終局時刻は2日目の15時38分。93手の短手数ながら、藤井王位の構想力と鋭い踏み込みが光った名局となりました。
これでシリーズ成績を3勝2敗とした藤井王位は、防衛および王位6連覇まであと1勝と王手をかけました。カド番に追い込まれた伊藤二冠の巻き返しなるか、注目の第6局は9月8日・9日に神奈川県秦野市の「元湯陣屋」で行われます。運命の第6局からも目が離せません。
《タカダ》

王位6連覇を目指す藤井聡太王位に、三冠獲得を狙う伊藤匠二冠が挑む大一番。激闘の舞台となったのは、徳島県徳島市の名料亭「渭水苑」です。
シリーズの主導権を握る防衛か挑戦者の王手か、注目の第5局の模様をお伝えします。
第5局の先手番は藤井王位。初手▲2六歩から進行し、戦型は本シリーズ3度目となる「角換わり」へ進みました。後手の伊藤二冠は、第1局・第3局に続いて果敢に「右玉」を選択します。
序盤は過去の実戦例を交えた高度な探り合いが続きました。39手目に藤井王位が▲2九飛と引いて手を変えると、伊藤二冠は△6二金~△4四歩と陣形を組み替えます。さらに48手目に△3三桂と跳ね、藤井王位が2筋の歩を交換したのに対し、54手目に伊藤二冠が選んだのは△4三金右という力強い一手でした。控室でも「本当に金を上がったのか」と感嘆の声が上がるほどの工夫の手に対し、藤井王位は55手目に▲7九飛と飛車を左辺へ転回。盤上は一気に前例のない深い構想戦へと足を踏み入れました。
藤井王位の▲7九飛に対し、伊藤二冠は56手目△5三銀と中央を手厚く組み直します。これに対し藤井王位は▲6八金左から▲7七金(59手目)と金を活用し、両者ともに1時間を超える長考を繰り出す重厚な押し引きが展開されました。
伊藤二冠が60手目に△2進歩と揺さぶりをかけると、藤井王位は▲2九飛と一旦戻し、△2一飛の受けに対して63手目▲8六歩と敵陣の隙を突く頭突きを繰り出します。伊藤二冠は46分の考慮の末、66手目△6五歩と突き越して反撃の意図を示したところで18時11分となり、藤井王位が67手目を封じて1日目が終了しました。
本局の勝負を分けた最大のポイントは、後手陣の対応と先手の「玉頭への強襲」にありました。
局後の検討でも明かされた通り、63手目▲8六歩に対して後手が64手目△8六同歩と応じた局面が最初の分岐点となりました。伊藤二冠はここで△2五歩と動いて攻め合うべきだったと振り返っており、実戦の△8六同歩から▲8四歩打(65手目)と垂らされたことで、後手は一気に攻めづらい展開へと追い込まれてしまいます。藤井王位の狙い通りの▲8三角(69手目)の打ち込みを許し、先手が盤上の主導権を完全に握る形となりました。
2日目、藤井王位は角を成り込んで馬を作ると、79手目に▲6五歩打と長考の末に踏み込みます。ここでも勝敗を決定づける判断が生じました。伊藤二冠は80手目に△6五同銀と応じましたが、これに対して藤井王位の▲7五馬(81手目)が絶品の手となり、後手陣の金銀の連携が乱れることになりました。代えて△6五同桂と取る変化もありましたが、いずれも先手の果敢な馬の活用が上回る展開となっていました。
藤井王位は83手目▲6四歩打から、85手目▲7六金と守りの金を攻めに動員する凄まじいパワープレーを敢行。後手玉の逃げ道を確実に狭めながら着実に寄り形を作っていきます。
伊藤二冠も86手目△6一玉と玉を早逃げして粘り強く耐えますが、藤井王位の攻めは揺るぎません。▲6五金~▲6五同馬と惜しみなく大駒を清算し、91手目に▲6三銀打と王手必至の形を築きました。
伊藤二冠は92手目△5二金打と受けるよりありませんでしたが、藤井王位が93手目に満を持して▲7九飛と転回したところで、万策尽きた伊藤二冠が投了を告げました。
終局時刻は2日目の15時38分。93手の短手数ながら、藤井王位の構想力と鋭い踏み込みが光った名局となりました。
これでシリーズ成績を3勝2敗とした藤井王位は、防衛および王位6連覇まであと1勝と王手をかけました。カド番に追い込まれた伊藤二冠の巻き返しなるか、注目の第6局は9月8日・9日に神奈川県秦野市の「元湯陣屋」で行われます。運命の第6局からも目が離せません。
《タカダ》

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