本のお話
2018年05月06日
いのちの姿 ( 完全版 )
宮本 輝
10年間のエッセイ集
宮本輝の小説家としての原点がここに
【 パニック障害がもたらしたもの 】
25歳の5月に、突然、得体のしれない精神性の疾患に苦しむようになる。
電車の中で突然発症、『 耐えられないほどの不安と恐怖がせり上がってきた 』
『 眩暈と耳鳴りがして、不安感はさらに強まり、動悸が頭の芯にまで響き始めた 』
いろんな病院で診てもらうが症状は悪くなるばかり
会社を休んで、設備の整った大きな病院の内科へ行った。
若い医師は、脳波、心電図、胸のレントゲンなどの検査をして、
『 どこも異常なし。小学生でもひとりで電車に乗って学校へ行ってるがな 』
『 気の持ちよう 』みたいな事を言われ
『 気の持ちようや。電車に乗るくらいが何やねん、俺は根性があるんや 』
心の中で繰り返した。
満員電車に乗る寸前から根性なんかどこかへ行ってしまい、
車中で、全身脂汗だらけになるほど不安に、もう今度こそ死ぬ、
と思うほどの烈しい不安と恐怖で歩き出せなくなる。
そんな時、本屋で立ち読みをしていて、自分ならこれの百倍面白いものが一晩で
書けると思いながら本を戻した。その瞬間小説家になろうと決める。
小説家になったら、電車に乗らなくて済む。毎日、家で仕事ができる。
家族を養って行くにはこれしかない。
数々の面白い作品を生み出す根源を見せていただきました。
《 フジイ 》
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