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神様のファインダー ~ジョー・オダネルの記録~

2017年08月14日

南千里店

明日15日は72回目の終戦の日。
厳密には前日14日にポツダム宣言を受諾した翌日に当たりますが、帝国臣民に放送を通じて公表した1945年(昭和20年)8月15日が広く一般市民に戦争終結が伝わった日として日本ではこの日が終戦の日とされています。

そして、この戦争終結を決定づけたのが、8月6日に広島そして9日に長崎を壊滅させたアメリカ軍による原爆投下であったことは言うまでもありません。

今では72年前の当時を知る人も少なくなり、原爆の悲惨さ、愚かさを直接伝えていく事が難しくなっていっているのが現状です。

そんな中、ある一冊の本が日本人の中の薄れゆく戦争、特に原爆に対する醜く愚かな行為ということを再認識
させたことで巷で話題となっております。
私も、遅ればせながらその本を手にすることが出来たので、72回目の夏に読むことになりました。


『神様のファインダー 元米従軍カメラマンの遺産』

故ジョー・オダネル氏が終戦後の1945年と1946年に、日本の長崎及び広島における原爆投下直後の状況を、米海兵隊の写真家として記録するとともに、当時の状況そしてその後の反戦・反核活動へと進む氏の生涯を妻の坂井貴美子氏が綴った内容となっております。

オダネル氏が『人間の所業とは思えない』と感じた程に全てが焼き払われ破壊し尽くされた広島、そして長崎の状況を目の当たりにし、ファインダーを通して人の生死を克明に記録していき、米国人でありながら愚かな行為を嘆き悲しみ、そして自らも原爆による後遺症を背負いながらその生涯を反戦・反核活動に写真展を通じて費やしていく。

著書の中で当時の白黒写真が掲載されているのですが、その中にあって一瞬で目を奪われ心を打たれたのが「焼き場に立つ少年」と題された一葉の写真でした。



■焼き場に立つ少年

佐世保から長崎に入った私は、小高い丘の上から下を眺めていました。
すると白いマスクをかけた男たちが目に入りました。
彼らは六十センチ程の深さに掘った穴のそばで作業をしています。
やがて、十歳ぐらいの少年が歩いてくるのが目に留まりました。
おんぶひもをたすきにかけて、幼子を背中に背負っています。
弟や妹をおんぶしたまま広場で遊んでいる子供の姿は、当時の日本でよく目にする光景でした。
しかし、この少年の様子ははっきりと違っています。
重大な目的を持ってこの焼き場にやってきたという強い意志が感じられました。
しかも裸足です。
少年は焼き場のふちまで来ると、硬い表情で目を凝らして立ち尽くしています。
背中の赤ん坊はぐっすり眠っているのか、首を後ろにのけぞらせていました。
少年は焼き場のふちに、五分か十分も立っていたでしょうか。
白いマスクの男達がおもむろに近づいて、赤ん坊を受け取り、ゆっくりと葬るように、焼き場の熱い灰の上に横たえました。
まず幼い肉体が火に溶けるジューという音がしました。
それからまばゆい程の炎がさっと舞いあがり、真っ赤な夕日のような炎が、直立不動の少年のまだあどけない頬を赤く照らしました。
その時です、炎を食い入るように見つめる少年の唇に血がにじんでいるのに気が付いたのは。
少年があまりきつく噛み締めている為、血は流れる事もなく、ただ少年の下唇に赤くにじんでいました。
夕日のような炎が静まると、少年はくるりときびすを返し、沈黙のまま焼き場を去っていきました。

ー 著書より抜粋 ー

この1枚の写真の中の、直立不動の姿勢で自分自身を律して立つ少年の姿に、とても深い悲しみと言い表せない感情が込み上げてきました。
悲しみの表情や仕草が見て取れる写真であれば、負の感情として共感を覚えたでしょう。しかし、その姿は毅然としてまっすぐに前を見ている。
ただ前を見ているだけではなく、様々な感情を押し殺して唇を強く噛み締め日本人としての誇りと尊厳をその小さい身体で体現している。
日本人以外の人がこの写真を見てもたぶんそんな感情を持つことはできないでしょう。
この写真を撮ったオダネル氏も不思議に思ったのではないでしょうか。何故この少年は悲しんではいないんだ?何故涙を流さないんだ、と。
喜怒哀楽の感情表現を全面に押し出す米国人には、当時の教育に際しての『男子たる者みだりに人前で涙を見せてはならぬ』という先生や親の言葉を忠実に守っている姿は理解の及ばないことであったでしょう。


そして、侵略する側でもされる側でもなく今の子供達に、こんな姿はさせたくないと強く思いました。

昨今、朝鮮半島での動きが慌ただしくなっておりますが、核兵器が使われることが絶対あってはならないし、また使わざるを得ない状況に追い込むべきではないとも思います。


機会があれば、本書を是非一読されることをお薦めいたします。

《タカダ》

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